少子化は進む……育児休業が取れない厳しい現実

 最近、妻子による心中事件というのを、よく耳にします。
 その理由はそれぞれあるのでしょうが、育児ノイローゼも一つの大きな要因でしょう。

 仕事に忙しく、なかなか育児に参加しない夫。核家族で相談できる相手もなかなか無く、なかなか泣き止まない乳児を前に途方にくれ、育児疲れのイライラが精神を蝕む……。

 やはり、育児には、夫の協力は不可欠です。
 「協力」というか、育児は妻の仕事ではなく、夫婦で行なうものですね。
 まあ「亭主元気で留守がいい」という考えの奥さんも少なくはありません。母親としても、必ずしも男性に育休まで取って欲しいとは願っていないという声もありますし、逆にしっかり仕事をして、ちゃんと給料を稼いでほしい……それが本音の昨今かもしれませんが、やっぱり子育ての現場に父親の愛情は必要ですよ。
 (そこらへん、父親が育児に参加すると、子どもの自己評価が高まる、という記事を以前書きましたけどね)


 そこで問題の「育児休暇」なのですが、男性が育休を取るのは、かなり至難の業です。

男と少子化/1 「育児休業?前例ないだろう」「やる気あるのか」
「男で育休を取るつもりか。前例はないだろう? まあ無理だな」。兵庫県の元運輸会社社員の男性(38)は03年末、上司の人事課長に育児休業を願い出たが、却下された。当時長女は1歳。妻(37)は病気で、選択肢は限られていた。
 会社の従業員は約500人で、創業は大正。女性でも育休を取りにくく、古い会社だと思っていた。そんな風土に風穴を開けたい、という思惑もあった。
 3カ月後、この課長から突然、人事異動を告げられた。異動先は会社が事業の委託を受けている接客関係の職場。勤務時間が不規則で、「明らかに報復人事だった」。(中略)
 新しい職場は早朝出勤も多く、子どもを市内の実家に預けてしのぐ日々が続いた。だんだんと追い詰められる日常に憤りが募り、「働き方を変えるしかない」と決意した。
 退職は05年2月。「会社勤めはまた同じ目に遭う」と思い、自営業(保険代理店)を選んだ。ファイナンシャルプランナーの資格も取ったが、顧客開拓は容易ではない。収入は3割ほど減った。
 それでも、勤務時間の融通が利き、仕事と育児の両立が可能になったメリットの方が大きかった。昨年には、長男も生まれた。
 退職後、元同僚から異動はやはり報復的なものと示唆された。男性は「男の育休は、『男は仕事、女は家庭』との考えが強い地方では煙たがられるだけ」と話す。

 この方の場合、奥さんが病気だったので、育休はどうしても取得せざるをえなかったのでしょう。
 しかし、会社……というか上司は理解しなかった。
 おまけに報復とは……最悪の事態です。

 確かに、子どもを設けられる男性というのは会社の中でもそれなりの立場を持ち、長期に抜けられると困る面もあります。
 おまけに、「その社員の子どもの育成」がそのまま会社の利益になる訳ではないので、上司としても面白くない。

 長い目で見れば「将来の日本を背負う子どもの育成」という、重大な意味があるのですが、そんな観点などすぐに持てるものではないのでしょう。

 いやはや、難しいです。


 上記記事の2例目の方も言われていましたが、育休というもの、「不安で仕方ないが取ってみるしかない」。

 以前もこのブログで書きましたが、育休を取りやすくして不安を無くし、その社員のモチベーションを高めることができれば、逆に会社の利益になるのではないか、という発想も、やはり現場ではなかなかできないようです。
 そもそも、家族想いで、「古い体質に風穴を空けたい」と考え、また退職して自営業の道を選んでも立派に生き抜くことができる、こんな素晴らしい人材を失ってしまうことが、会社にとって損だったのではないか、とすら思いますね。

 社員が幸せを感じられるようになれば、そのまま幸せな会社になれるのではないでしょうか。
 ……そうもいかない、厳しい世の中ですかね。


 少子化担当の政治家様。そこらへんの意識改革からお願いします。

 でないと、女性も安心して子どもを産めなくなりそうです。